2025/09/14 21:07

こんにちは、お久しぶりです。

厳しかった夏がようやく残りわずかに。疲れましたよね。あなたさまがお元気だといいなと思っています。

今日はこの夏わたしが叶えた夢のことを書きます。
あと、暇を意図的に作った話も。

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わたしはいつの頃からか「じぶんで稼いで、毎月寄付をしたい」と考えていました。
かつて母がユニセフのマンスリーサポーターをしていたからでしょう。
わたしは猫に漫画を描かせてもらっているので、やはり猫に関する寄付先がよかろうと検索してはみたものの、寄付やクラウドファンディングを募る保護活動の切実な記事や情報に、心が痛むばかりで決めきれず。

そんな折「すぱっと決めぇや」と言わんばかりに偶然の機会は訪れました。

この初夏に愛猫を亡くした実姉が、新たな猫を迎えることにしたと連絡をくれました。
すこし遠いけれど神奈川の動物愛護施設に見学に行くというので、わたしは直感で「一緒に行く」と返信。
8月末の煮えるような熱気のなか、日陰に避難する牛たちを見ながら、おそらく県民も知らないであろう内陸の里山へ。

施設は小高い丘に囲まれ、頂にはここで亡くなった保護動物の「慰霊碑」がありました。
それは(両親が数年住んだ)小豆島で姉とともに見つけた竹藪のなかの墓石群と似ていました。
わたしは、姉とここにいるのが不思議ではありませんでした。
たまにしか会わない姉妹だけれど、われわれが自然のなかにいる記憶は、やけに鮮やかで本質的に感じます。

見学当日、わたしは姉を「えらい」と思いました。
長い年月を共にした大切な猫を亡くし、憔悴したでしょうが、この先の日々も猫と暮らす自身をうたがわず、早々に行動に打って出たこと。
とてもえらい。
わたしは出来そうにない、か?
のばら(わたしの姫婆さま)の死。その現実が来るまでは、感じられない。

よく管理されているきれいな施設で、さまざまに安全を体現(安心、退屈、寂しい、まだ怖いから隠れているよ、等)して過ごす動物たちの様子を見て回り、最後、ガラス張りの猫部屋のまえに座り込むようにして、気がつくと2時間が経過していました。

面白いことに、姉はあらかじめ候補に挙げていた猫以外の、「まったくの新人」を選ぶはこびとなりました。

熱心な職員と気持ちのよい運営、なにより猫たちの自然な態度に安心をもらったわたしは、その月末に頂戴した原稿料からわずかながら寄付金を納めました。
少額ですが、収入を得る度におこなっていきます。

わたしは「夢をまたひとつ叶えたのだな」と
実際口に出して呟きました。

拙作「濃藍アパートメントの猫」は猫という存在に「描かせて」もらっている漫画。そんな感覚を楽しみ、できる限り制作し続けられたらと思っています。

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暇だな。漫画「でも」読むか。
この状況をじぶんに作り出すために、2か月くらいかかりました。

わたしの漫画は隔月連載なので激務ではないし、家事は好きだしワンオペでもまだ余裕あり。
それに余暇は読書や映画に趣味の占い動画、友だちと出かけ、遠くのひとに会いに行くなどしていたら、漫画のまの字もないのです。
ただでさえ大人になって絶たれている漫画読書。
ひどい風邪をひいたときに「ガラスの仮面」を通しで3回繰り返し読んだ頃がなつかしい。

この夏、ほんとうに暑かったですね。
暑くて、やる気なく起き上がりもしない時間自体を、わたしは作ってみようと思いました。
けれど実現には長くかかりました。わたしには漫画という本は気合を入れて開くものになってしまったのか。

9月雨上がりのとある晩のこと、ハネアリが大量におしよせたので、翌日に大掃除まではいかないが掃除機をかけまくり、午後からなんにもやりたくない気持ちでいたひとりの休日。
それは突如やってきました。

あー、漫画「でも」読むか…。

これだ、この気持ちだ。
漫画は生活と呼応するものだ。
「でも」はさげすみではない。じぶんの現状と合う適材の選択だ。
漫画を読むときには無理なく自分時間で同調する。それは「動かずそこに在る」画だから。
映画だと追う感覚が強くなるでしょう。

等々、つい分析が始まりそうになったので、思考をかなぐり捨ててただ読みました「お父さんは心配性」全6巻を。
ああ!くつろいだ!(安井さんが好きだ!)

生活者にとっての漫画の存在感覚と、制作サイドの漫画観。その両方にある程度は気がついていたい。
数々の漫画表現を人生に刻まれているわれわれ(読者)が在って、漫画文化は無限に発展する。
一方で作り手として無闇にさまざまに考えます。
芸術に傾倒する描き手であるじぶんを愛でる余裕を持つ…
売り手との実際的進行を繰り広げるには…

じぶんの繊細さがあぶりだされて、何度も向き直し、考えかたを探っている毎日です。
疲れたらまた「全巻読破の日」がやってきて、勇気はいくらでも生みだせるでしょう。
わたしは漫画家。
こんなにオモシロかっこいい商いはないですよ。

木村さくら

みなさまお元気で、またいつか。
↓猫にも漫画にも関連する画がなかったので、これを。