2024/04/21 15:06
みなさん、こんにちは。
「水平思考」お楽しみいただいていますでしょうか。
今日もこの本にまつわる事柄を書きます。
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わたしが通った東京家政大学美術学部には、キャンパスに住みついていたねこがいました。
彼女は校内で誰よりも知られた存在でした。
人を恐れず外も内も自由に行き来し、大概どこでも「ミケ」と呼ばれ、休みたければ画材が放り込まれたバスケットに入って絵の具のチューブにうずまって眠りました。そうとは知らない教授が引き出してびっくり箱。
なかには「ねこぎらい」の教授もいて、首ねっこをつかまれ教室から退場させられる場面もありました。
なにをやったらいいかわからないまま凡庸に甘んじる学生の群れで、彼女ミケの、存在することだけの強さが際立ちました。
ぼくと先輩に1巻から度々登場するねこは「美美」(びび)といいます。
おもに遠久野の部屋や、向かいのビルの古書店を眠る場所と決めていて、界隈を自由に闊歩する気ままな野良です。
「水平思考」冒頭のショートストーリー「ねこ文~女帝のうた~」は美美の観点から「想われる世界」を描きました。
わたしがねこという存在から得た学び、好きや憧れを越えた、言うなれば「恵み」を表わしています。
人間に属するわたしたちと、「そんなん知ったこっちゃない」命が共に生きている恵沢です。
そして、あえて“ねこの言い分”を書き出すなら “古文”風にして狂言回しの性格をあいまいにしました。
これは擬人化と差別する必然でした。
ねこに現代人的性格が出る文章は、はまらない。
さて、「ねこ文~女帝のうた~」には、夢うつつの美美の背景に、波打ち際とひまわりの映像が浮かんできます。
このふたつは作中にリフレインする、ぼく先物語の重要な舞台です。
近場が育った房総半島の海、少年遠久野が西日村と居た、自然のなか。
愛が、絶望が、同じくらい激しく鮮やかにかれらを形成し、引き裂いた原風景。
そのものずばりのシーンをえがくのは、一体いつのことになりますやら。
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今回も読んでくださってありがとう。
わたしが漫画の続きを描けるよう、みなさま引き続きの応援、どうぞよろしくおねがいします。
木村さくら
*「ぼくと先輩」にまつわること、特に新巻「水平思考」についてにブログ書いていきます。題して「ぼくと先輩の地中線」。本の感想やご質問もお待ちしています。CONTACT | 点点とぼくと先輩