2024/04/16 17:34

「あなたって、不思議ね。ひょうきんな子供を描いたかと思うと、こんなロマンティックな絵もあるのね」
そう言って笑う、わたしの友だち。
彼女が目にしているのはそう、「水平思考」の表紙。
わたしの「ぼくと先輩」最新巻です。


新しい本が出来てすぐ、わたしは友だちやお会いできる読者のかたへは直接お届けしてきました。旅する絵本屋(ぼく先11話のタイトル)よろしく旅する漫画家をやっています。


表紙で笑ってくれたのは大磯のTさんで、先週11日に最新作を届けました。


「なんだか親父がいるようね」
本文のなかにわたしの父・平野甲賀を見つけるTさん。
彼女は父の同級生、武蔵野美大からの友人です。
わたしは、今やわたしが友だちですから、と言いました。


前々回かな?表紙のロケーションについて書きました。入間の、自然たっぷりの墓所を背景に、高台からの景色を見る主人公たち。表紙だけで語りたいウラ話がある。それはロマンティックでしょう。


かたや本文ではチョケにチョケるYouTuberおよびミニキャラなども登場し、カオスティックなおふざけも同居します。わたしと“ぼくたち”はウケ狙いもしたいお調子者でもあります。詩的な純真と、だれかの心を射貫きたい俗物が混じり合います。


「水平思考」収録3話目の「you,you.」は当初タイトル「ポエト&ハンツマン」と予定していました。

詩人(遠久野さん)と狩人(近場くん)が「かなりやビルヂング」の庭でひと休みしているエピソード。

ぼくと先輩のベース的な一場面を描けました。


タイトルを「you,you.」に決定したのは、主人公ふたりが互いを呼び合うその表記は日本語にしかないニュアンスがよいと、ぼく先黎明期から考えてきたからです。


きみ、あなた。ぼく、ぼく。


近場くん遠久野さんの場合はいずれも平仮名で記す。
その他の人物たちにも「僕」や「ボク」、オレ、おれ、キミやオマエ等、かれらが繰ることばはそれぞれの特性に沿った表記にしています。




Tさんとの夕方、二宮の菜の花畑を歩きました。
わたしの80歳台の友だちは、ハイキング道をスイスイゆきます。
独り立ちしたばかりで「まだ羽根が柔らかい」カラスとセイヨウヤドリギを見つけました。
春霞の空にうっすらと富士山。散り際の桜でよかった、花吹雪をくれるから。丘の上の裸の木はクストリッツァの映画みたい。


エミール・クストリッツァ。それはわたしの、制作に対する初心の象徴です。
この名が自然と浮かんだなら、初心を見つめる好機です。

思考の水平を見て、こう思います。


わたしはなにをする、どこへいく―。


 

木村さくら


*「ぼくと先輩」にまつわること、特に新巻「水平思考」についてにブログ書いていきます。題して「ぼくと先輩の地中線」。本の感想やご質問もお待ちしています。CONTACT | 点点とぼくと先輩